鎌倉の豊かな四季が、身近に感じられる住まいの窓辺から。
寒さが日に日に和らいで、春の光りに満たされる頃、我が家のある谷戸では
あちこちで山桜が咲き始めます。すこしずつピンク色に色づいていた風景が、
麗らかな春の日に目覚める一週間。はらはらと花びらが舞い落ちるまで、
桜の舞台を楽しむ窓辺です。春の柔らかな光り、花の香りや鳥の声を運ぶ風を
上手に取り入れる窓。うまく作られたら、毎年春が待ち遠しくなります。
ここ数年の夏の陽射しは、都会では息苦しいほどの酷暑をもたらします。
「住まいは夏を旨とすべし」という言葉も、意味合いが変わっています。
庇を大きく跳ねだして、陽射しを遮るのは当然として、緑のカーテンや打ち水、
自然の涼を呼び込む工夫が欠かせない、日本の夏の住まい。
すこしでも風が抜け、熱を逃がすように、空気の流れをうながす設計を
検証を重ねながら繰り返して、暑さと闘わずして勝つような住まいを目指します。
鮮やかに色づく谷戸の秋。美味しい秋は、目にもごちそうを届けてくれます。
夏の暑さが和らいで、春とは違った心地よい風を入れて、秋の高くなった空を
ゆっくり見上げて過ごす。足元に鳴く、虫たちの声を聴きながら横になる。
読書の秋に、疲れた目を休めるには、外の緑を眺める窓辺がぴったりです。
東と南に大きく開けた窓から、晴れた日には冬のお日様が入ります。
夏には陽射しを遮る庇も、太陽の高度を考えれば、冬の陽射しは
リビングの奥まで届きます。杉の木の床を直接暖めてくれるぬくもり。
うちの犬は、寝転びながら全身で受け止めています。
冬の窓辺は、暖められた室内の温度が、窓ガラスから逃げていく場所です。
大きな窓をつくる時は、断熱のレベルを上げたり、熱が逃げる隙間を作らない、
といった設計の工夫が大切です。冬のお日様を迎え、夕方から夜の冷気を呼び込まない窓辺。よくよく考えて設計しなくては。
四季から学ぶかたち
人が真っ暗闇で生き続けられないのは、光りや風、緑という自然との交感が不可欠であることの証です。人間らしく自然に生きるために、住まいを創ること。
時代がどんなに移り変わっても、人が求める心地のよさは自然から得るもの。
四季折々に訪れる、光や風をどのように住まいのかたちに結びつけてゆくのか。
窓の位置や大きさだけではなく、部屋の大きさやつながり、水や空気の流れを
より自然な住まいのかたちにするのが、設計者の役割です。
豊かな日本の四季を素直に体感し、豊かな住まいのかたちに、学び生かす。
たくさん教えられること、四季折々に感じつつ、日常の設計に向かいます。